森から生まれるオイルが林業を救う!? 今注目を浴びている「香り資源」の可能性
2021/02/12
マスクにも精油の広がり
抗菌・抗ウイルス作用にも期待
今、注目を集めるのはマスク用だ。コロナ禍のためマスク需要が急拡大したが、そこでもマスクに精油によって香り成分をつけた商品が増えた。これは香りを楽しむだけでなく抗菌・抗ウイルス作用に期待しているのだろう。
精油市場は急伸しており、2018年は約3564億円(そのうち製品市場は約3012億円)まで膨らんだと推計されている。(日本アロマ環境協会調べ)当然、その原料も多く求められるようになった。
原料から精油を取り出すには、蒸留法や圧搾法、溶剤抽出法……などいくつか方法はあるが、設備投資も必要だ。ただ少量なら小規模な機材でも可能なため、自家製造し直販に挑戦する林業家もいる。
木材生産とはまったく違った新しい顧客を開拓しなければならないが、林業の多角経営にもつながっている。もしかしたら大きく化ける可能性があるのだ。
なかでも注目されている原料は、クロモジだろう。その広がりを後編で紹介したい。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。