「薪は主食ではなくスイーツ」─“暖かさ”だけでない、薪ビジネスに求められるもの
2020/12/14

現在、暖房なら灯油やガス、電気ストーブなどがあり、使用は簡単でストーブおよび燃料の価格も安い。にもかかわらず薪ストーブを選択するユーザーがいるのはなぜか。彼らは薪が燃え、上げる炎のゆらぎに「癒し」感覚を求めることが多いという。
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炎のゆらぎに「癒し」を求め
薪ストーブを選択するユーザー
薪ビジネスは、利益率も高くて林業家の副業となりうる。だが安易に参入しても、必ず成功するわけではない。その理由をある業者が教えてくれた。
「薪は主食ではなく、スイーツなんですよ」。
これは何を意味しているか。主食とは、いわゆる木材を素材として扱う用途で、建築材や家具材として使われる木材を指す。無垢の製材はもちろん、合板や集成材、また家具や建具への加工も含める。ある意味、王道の木材用途だ。
それに対して薪は、多くが薪ストーブの燃料だ。ところが暖房なら灯油やガス、電気ストーブなどもあり、そちらの方が使用は簡単でストーブおよび燃料の価格も安い。一方で薪ストーブの火付けは大変だし、灰などの処理のような片づけも楽ではない。
にもかかわらず薪ストーブを選択するユーザーがいるのはなぜか。彼らは薪ストーブを暖房のためだけに求めているのではない。薪が燃え、上げる炎のゆらぎに「癒し」感覚を求めることが多い。逆に言えば、その感覚に薪の価値を見出している。いわゆる「ロマン」を、薪を燃やすことに感じている。それを「スイーツ」と表現したのだ。
だから彼らの求める薪も、それに合致していなければならない。主食のように満腹になって栄養を吸収すればよいのではなく、スイーツの美味しさと同じような快感を求める。求める目的は暖かさだけでないのである。
「だから配達する薪は、品質や見映えを気にします。気づかずに一部が腐った薪や苔のついた薪を含めて届けてしまったことがあったのですが、クレームが入ってその後注文が来なくなりました」
もちろん木の一部が腐っていても苔がついていても、燃焼には問題ない。しかしスイーツとして燃える薪を眺めて楽しむユーザーには不興だったのである。