<事例>森林認証制度に新たな動き! 認証そのものを環境面におけるブランド価値に
2020/11/16
森林認証制度を
倫理的な指標に
ただ新たな動きもある。日本では認証を受けても木材価格が上がらないのが悩みだったが、そもそも認証を受けた森林からの産物は木材だけでない。森林で生産されたものには何でも認証ラベルをつけることができる。そして認証そのものが世間に環境面におけるブランド価値を持たせられるのだ。
たとえば村の森林が全部FSC認証を取得している宮崎県諸塚村では、2007年にコナラを原木として栽培されたシイタケに認証ラベルをつけた。また埼玉県秩父市では、カエデの樹液を採取してメープルシロップを生産しているが、そのカエデの生える森(市有林)がSGEC認証を受けた。そこでそのシロップを使ったお菓子(マシュマロ)にも認証が付くことになり、今年6月から販売され始めた。
認証ラベルは、ほかにも山菜や各種キノコ、そして森から湧き出る水も対象にすることができるだろう。人の口に入るものは消費者も木材より環境に敏感であることが予想されるから、森林認証を取得した商品はある種のブランディング効果が見込まれている。
また認証を受けるために外部の人の目で審査され、慣習的に行っていた不合理な作業を改めるきっかけになったという指摘もある。
森林認証制度は、アイデア次第でさまざまな利用が可能なだけでなく、倫理的な指標にもなる。もっと工夫を重ねて、日本の林業も世界の潮流に乗り遅れないようにすべきだろう。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。