国産材原木流通をめぐる近年の動きとは? 直接販売方式が台頭した背景を見る
2020/08/26
ただし、高価格が期待できる優良材や特殊材は、従来通り市売で販売することがやはり有利になる。また、協定取引はもともと合板工場向けの販売方法として広まった経緯があるため、近隣に合板工場がない地域では、今も市売が原木取引の中心となっているケースが多い。
例えば、栃木県森林組合連合会では、鹿沼、矢板、大田原の三共販所で年間17万㎥ほどの原木を扱っており(2019年実績は17万1197㎥)、その4分の3は従来通りの市売方式で販売している。直送による販売も、並材を中心に手掛けてはいるが、近隣に合板工場はなく、八溝・日光という東日本有数の林業地を有し、質の高い原木が多く産出されるという土地柄でもあることから、今後も市売重視の姿勢を変えずに共販事業を展開していく方針だ。
このほか、協定取り引きの対象になりづらい小規模製材工場が多い地域でも市売に対するニーズは根強い。山側でも自伐林家などは、市ごとに代金が決済される換金性の高さから、市場の存在を重宝している実態もある。
ただし、従来通りの経営でよいわけはなく、時代に即したスタイルを取り入れていかなければ、事業が停滞しかねない。前のめりに変革の道を模索したい。
原木流通のKEYWORD
直送
山元の生産現場や山土場、中間土場などから、合板工場や製材工場といった需要者に原木を直接、輸送すること。主に並材が対象になるが、注文材や特殊材でも行われる。競りや入札を経ずに相対で原木を販売するシステム自体を「直送」と表現することもある。
協定取引
木材生産者あるいは流通業者と需要者が樹種や径級、数量、価格を定めた協定を締結し、それに基づいて原木を売買すること。期間は四半期ごととするのが一般的。当初は紳士協定として不安定さも指摘されたが、最近は双方が協定を重視する姿勢が定着している。
文:赤堀楠雄
FOREST JOURNAL vol.4(2020年夏号)より転載