伐採現場にインカムを導入して作業効率化! スマート林業の前にできることとは
2020/04/20
スマート林業の前にできることは
作業を安全かつ楽にする機材の導入
Web版フォレストジャーナルでは「着るロボット」を紹介した。身体に装着することで筋肉をアシストして、階段や急斜面 を登りやすくしたり、重いものを軽々と持てるパワードスーツだ。すでに工場や農場、さらに介護現場などで採用されているが、林業用にも使えないかと模索されている。
これを使えば、林業に関する知識や技術は優れているが、高齢になって体力の落ちた人でも、もう少し長く働けるかもしれない。あるいは境界線確認や現況調査などに山の素人を現場に連れて行く際にも活躍するかもしれない。ちょっとした機材の運搬や移動も楽になるだろう。
ほかにもスマホで撮影するだけで立木の本数や直径を求めたり、丸太の山の材積を計算するアプリもある。空中写真から地形を読み取り、作業道のルートを導き出すソフトもある。林業用に応用できる既成の技術は少なくない。身近な機械化で現場の改善ができる。しかも費用は比較的安く済む。
高性能機器の開発を待つ前に、作業を安全かつ楽にする機材を導入する林業こそスマートではなかろうか。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。
著書
『絶望の林業』
2200円(税別) 2019年8月5日発行・新泉社刊
日本の林業は、根底からおかしいのではないか。長く林業界をウォッチし続けていると、“不都合な真実”に触れることが多くなった。何から何まで補助金漬け、死傷者続出の現場、相次ぐ違法伐採、非科学的な施策……。林業を成長産業にという掛け声ばかりが響くが、それは官製フェイクニュースであり、衰退産業の縮図である。だが目を背けることなく問題点を凝視しなければ、本当の「希望の林業」への道筋も見えないだろう。
FOREST JOURNAL vol.3(2020年春号)より転載