増加する山林の売買。 “森林探偵”の需要が高まる
2020/03/25
増加する山林売買
山林の売買は今後増えていくだろう。所有する森林を手放したい人が多いのだ。相続したものの山から遠く離れた地域に住み、また生活も仕事も都会で完結している場合、森林を所有するメリットはない。それどころか固定資産税を始めとして負担ばかりが被さってくる。近年増加する自然災害でも、土砂崩れや道路や民家への倒木などを引き起こすとトラブルの元だ。
一方で、森林を所有したい人も少なくない。規模を拡大したい林業事業者、あるいは新規参入を計画している人も増えているからだ。また林業でなく、企業が社員の福利厚生、あるいは資産管理や社会貢献の一環で森林の所有に興味を示すところが現れている。
すでにネット上にも全国の山林売買のお手伝いをしている業者がいくつか現れている。需要は今後増えていくのではないか。ただ、所有権や境界線確定、そして譲渡先の森林管理能力の判定などをしっかりしないと、単なる原野商法になりかねない。
国は昨年から森林経営管理制度をスタートさせた。これは森林経営に消極的な山主から森林を市町村が預かり、それを意欲的な事業体に委託する、あるいは自治体自身が経営することを可能にするものだ。そのための財源として森林環境譲与税も設けられた。
これらをより有益に機能させるためにも、森林経営に前向きな人への譲渡が重要になってくる。実は自治体も、こうした作業は苦手な分野だ。そこに新規ビジネスとして参入余地もあるだろう。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。