【連載コラム】森林ジャーナリスト・田中淳夫氏が説く! 林業界に必要な「パラダイム転換」とは
2019/07/31
スギやヒノキの単一同樹齢林をガラリと変える森づくりを行う山主。やみくもな機械化や大規模化に背を向け、ていねいな施業を心がけ材価を上げている素材生産業者。木材を改質して新しい可能性にかける研究者や実業家。林家を支えるため木材の買取価格を市価の2倍に設定した工務店。そして、海外市場に目を向け深慮遠謀で取り組む人々……。
もちろん、それらの一つひとつは小さな挑戦であり、まだ林業界のパラダイムを大きく動かすまでには至っていない。しかし、彼らの動きをフォローしておかなければ、林業界の未来も描けない。
本コラムを通して、多少ともそうした「希望の林業」を紹介することができれば幸いである。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。
著書
『絶望の林業』
2200円(税別) 2019年8月5日発行・新泉社刊
日本の林業は、根底からおかしいのではないか。長く林業界をウォッチし続けていると、“不都合な真実”に触れることが多くなった。何から何まで補助金漬け、死傷者続出の現場、相次ぐ違法伐採、非科学的な施策……。林業を成長産業にという掛け声ばかりが響くが、それは官製フェイクニュースであり、衰退産業の縮図である。だが目を背けることなく問題点を凝視しなければ、本当の「希望の林業」への道筋も見えないだろう。