景観木工で「木の街」の実現、地域活性化へ! 木工・適した部材を提案できるかが鍵に
2021/06/30
各地に広がる「木の街づくり」
「景観木工」を提案できるか
適した部材を提供できるかが鍵に
木の街づくりといったキャッチフレーズはよくあるが、コンクリートのビルや商店などを木造に建て替えるのは簡単なことではない。また高層ビルを木造にするのは技術的にも法的な面からも難しい。しかし、この方法……建物そのものを建て直すのではなく目に映る表だけを木で覆うのなら、安価で簡単に取り組むことができる。それでいて効果は大きいのだ。
実は、この発想そのものは各地に広がっている。観光地だけでなく、飲食店などが外観や内装に木を取り入れるケースは増えてきた。ショッピングモール内の店舗なのに内装が木ばかりという店も登場している。あるいはデッキなどを築くこともある。また、10階建以上のビルが道に面した外装に木製のルーバー(細長い板や羽板状の部材を平行に複数並べたもの)を張るようになった。これで見た目が一新しているのだ。ルーバーは、通気性を保ちながらの日除けや目隠しなどの役割があるが、建物全体の景観を変えるのにも役立つ。
日本圧着端子製造ビル
もちろん建築物の外構や内装に木材を使うときには、耐火性を要求される、汚れてきたら掃除が大変など気をつけるべき点もある。しかし、建て替えに比べたら遥かに安上がりで短期間の施工で済み、イメージを変えられるといったメリットも多くある。手軽な「木の街づくり」なのである。
建築側には、木材を景観に活かしたいという思いは強まっている。むしろ、木材供給側が建築設計者に「景観木工」を提案できるか、適した部材を提供できるかどうかが鍵ではなかろうか。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。