地域資源をつなぐ「農泊事業」で加子母を魅力ある地域に! 森林組合の挑戦
2021/06/02

地域全体を巻き込んでの農泊事業を展開する加子母森林組合。同事業を担当する職員の安江さんは、「自分たちの役割は点を線とすること」と語ってくれた。同組合の取り組みから、地域資源活用のためのヒントを探る。
メイン画像:乙女渓谷の登山道。夏はせせらぎのなか、森林浴を楽しめる。
地域の資源を
農泊事業でつないでいく
伊勢神宮の御用材としても用いられる全国でも稀なヒノキの天然林や、明治時代から続く歌舞伎の芝居小屋である「明治座」をはじめ、豊富な地域資源を抱える岐阜県中津川市の加子母(かしも)地域。
しかしながら、加子母森林組合の安江さんは「数年前までは、それぞれの地域資源をバラバラに活用している状況でした」という。
「そこで地域の魅力をひとつにまとめるために、キャンプ場やコテージなどの運営経験をもつ私たち森林組合が事務局となり、NPO法人『かしもむら』や収穫体験を実施する農業法人、道の駅と協力しながら、2017年から取り組みはじめたのが農泊事業です」。
農泊事業といっても、決められたひとつのプランを設けたわけではない。旅行代理店や地域の事業体と協力しながら、ひとつツアーを組み立てていくかたちだ。
「例えば加子母に息づく『木の文化』を体験してもらうとしたら、まずは樹齢1000年を超える大ヒノキが自生する天然林を散策してもらいます。それから地元の製材所などを見学してもらい、ヒノキの箸づくりを体験。夜は森のなかのコテージで、飛騨牛やトマトなど地の食材を生かしたBBQに舌鼓を打ってもらいます」。
ヒノキのマイ箸づくり体験は子供たちに大人気。
ほかにも水力発電所などを見学する「サステナブルツアー」や、「明治座」での歌舞伎メイク体験、氷瀑(凍結した滝)を眺めるトレッキングツアーなど、さまざまな企画を展開してきた。
120年の歴史を誇る「明治座」。今も様々な催しが開催される。
従来はこうしたツアーのガイドなどを地元のボランティアスタッフが担っていたが、農泊事業への転換に伴い、スタッフへの賃金支払いを前提にした、ツアー価格の適正化にも取り組んだという。
冬は凍結した滝をめざす「氷瀑ツアー」も開催。
「事業の継続性を高めることで、独特の歴史と文化を抱える、加子母という土地のファンを、もっと増やしていけたら嬉しいですね」