森林は温暖化を防止するための道具ではない 大増伐へと歩み出しかねない現状に警鐘
2020/12/07
大きく立派な木の姿はわれわれの心に何とも言えない安らぎを覚えさせ、100年を優に超え、数百年あるいはそれ以上も生き続けるその姿に対峙していると、その神々しいまでの生命力に対して、こうべを垂れたくなるような念が沸き起こってくる。
そのような心持ちをわれわれにもたらしてくれることも木の大切な機能だとするなら、高齢になると二酸化炭素の吸収能力が衰えるからなどという理屈を唱えることが、いかに矮小な議論であることか。森林は温暖化を防止するための道具ではないのである。
過去の轍を踏まないように
現政権の菅義偉首相は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標を示した。それはぜひにも実現してほしいことではあるが、そのために森林の二酸化炭素吸収能力に過度の期待をかけ、人工林を若返らせるべきだなとという話にならないように、林業関係者こそが気を確かに持っておかなければならない。
広葉樹よりも針葉樹の方が成長が早いからなどという理由で拡大造林を推進し、成長量を上回る過度の伐採を重ねて資源を細らせ、日本の森を作り変えてしまった過去の轍を踏まないようにしなければならないのである。
樹齢数100年のカツラの大木。森林の二酸化炭素吸収能力だけを云々することの矮小さに思いを至らせたい
PROFILE
林材ライター
赤堀楠雄
1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。