森林は温暖化を防止するための道具ではない 大増伐へと歩み出しかねない現状に警鐘
2020/12/07

スギやヒノキ、カラマツの人工林に関して、皆伐を行い、再造林を進めようという掛け声が主に行政サイドからなされている。だが、それは本当に必要なことなのか? 林材ライターの赤堀楠雄氏は、大増伐へと歩み出しかねない現状に警鐘を鳴らす。
40~60年生は
「高齢林」ではない
現在の人工林の状態について、40~60年生くらいの木が多くなっていることを「本格的な伐期が訪れている」とする向きがあるが、この「伐期」という表現は適切ではない。スギもヒノキもカラマツも100年を優に超えて生き続ける生物なのである。
それを40年生やら50年生やらが伐り時であり、皆伐の時機だと決めつけることなどできるわけがない。ただ、利用できる大きさに育ってきていることは事実なので、ここは「本格的な利用期が到来した」と表現すべきなのである。
皆伐再造林を進める理由として、人工林の「少子高齢化」状態を改善し、林齢構成を平準化するためだという説明もよく聞かれる。だが、これにも違和感がある。最近20~30年ほどは造林があまり行われていないので、確かに若齢林は少ない。
しかし、上に書いたように木はとても長く生き続けるわけだから、40~60年生程度を「高樹齢」とは言えない。林齢平準化を志向するなら、せめて100年生くらいを筆頭とした状態を想定して、方法論を議論すべきだろう。
40~60年生程度は「伐期」ではない
森林は温暖化防止の
ツールではない
樹齢が高くなると成長力が鈍る、つまり、光合成で二酸化炭素を固定する(木が大きくなる)能力が衰えるから、高齢の木は伐採し、二酸化炭素の吸収固定能力が旺盛な若い木に植え替えるべきだとも言われる。
しかし、70年、80年という樹齢になっても木が大きく太り続けることは、いくつもの研究成果で明らかになっていて、40~60年生くらいを成長(二酸化炭素吸収固定)のピークだとするのは適切ではない。
森林には二酸化炭素を吸収固定する機能があり、それが温暖化防止の観点からも重要だということはわかる。しかし、森林の機能はそれだけではない。水源の涵養、防災、木材生産等々と、森林はさまざまな役割を果たしてくれている。
広葉樹の森を行く。森林がもたらしてくれる安らぎを大切にしたい