DIYユーザーの増加は林業界の変革を促す? 業界発展のために求められているものとは
2020/10/05
ユーザーが増えれば
「世間の目」が身近になる
それに対して、DIYでの木材利用が日本社会に根付けば、需要量が爆発的に増えるというわけにはいかもしれないが、ユーザー数が大幅に増えることは期待できる。
リピーターになってくれる可能性も住宅とは比較にならないほど高い。そうなれば木を好きになってもらったり、木材利用の意義を理解してもらったりするためのPR効果も上がり、世の中を動かす力を蓄えることにもつながる。
一方、世間の視線にさらされることへの自覚も必要になる。1990年代、世界的に環境問題への関心が高まる中で、熱帯林の破壊が問題視されるようになったとき、ヨーロッパでは熱帯産木材に対して市民主導の不買運動が起きた。
そうした社会情勢を背景に、持続可能な経営が確保された森林から生産される木材を識別するための「ラベリング」制度の必要性が議論されるようになり、FSCやPEFCといった森林認証制度の導入につながっていった。
ホームセンターの木材売り場。DIYの需要が増えれば、木材のユーザー数を増やす効果が期待できる。
ユーザーの数が増え、木材利用への関心が高まることは、林業界や木材業界にとって喜ばしいことに違いない。その一方で、自然環境そのものである森林と深く関わる立場として、襟を正さなければならない場面も当然増える。
違法伐採の可能性があるものでも目こぼししてもらおうなどという甘えは、ユーザーの意識が高まれば通らなくなる。木を身近に感じてくれるユーザーが増えるプラス効果を業界の発展につなげるための意識改革が求められている。
PROFILE
林業ライター
赤堀楠雄
1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。