無人駅に木製アートベンチを! 地域と森を繋ぐプロジェクトとは
2020/05/25
その後、地元沿線の方々だけではなく、旅行者にも愛され、私も老夫婦がカップルで腰掛けお孫さんが画像を記念撮影する姿を微笑ましく目撃した事がある。
静岡文化芸術大学、(公財)平野美術館等の協力が得られ、協賛にヤマハ株式会社CSR、スズキ株式会社が立ち、この年に『学生デザイン募集』が開始された。そして国立静岡大学の林幸輝(さき)さん等の映像製作チームによりドキュメンタリー『環~Tree×Artの軌跡~』が制作された。
動画【環-TREE×ARTの軌跡-】
デザイン公募には約200件の申し込みがあり、電話での応対の中には「うちの子は中学生で引きこもりですが、募集記事を見て目が輝いた。」「支援学校の教師だが子供たちが夢を描けた。選ばれなくても良いから応募させてあげたい。」という問い合わせに目が潤んだ。
駅に集まる星たちと希望を
『天使の椅子』設置式から8日経った3月11日に、東日本大震災が起き、JR山田線・仙北線・大船渡線・常盤線・石巻線、三陸鉄道南リアス線等々で駅ごと無くなった事実が報じられた。
駅は無人駅でも元来ストーリーや出会いや、希望や癒しの装置がそこにはある。次第に伝えられる被災された地域の傷跡を瞼に、天浜線の無人駅の意味を高感度で学生たちは感受し、無意識にベンチのデザインに反映させたのでないかと、全ての応募作品を見た後、そう感じた。
『天使の椅子』 モデル:山田早織、企画デザイン:創造再生研究所、天竜杉:天竜T.S.ドライシステム協同組合、製造:二橋元巳 中谷博彦、協力:天竜浜名湖鉄道、アンデコ
第一号の『天使の椅子』の命名は、子供たちに地域の思いを羽ばたかせて欲しいという願いからだった。コンテストで選ばれたアートベンチは、現在4駅に設置されているが、浜名湖を見下ろす寸座駅の『たまるベンチ』〜(当時)静岡文化芸術大学3年生、増田航平氏デザイン〜から携帯小説『無人駅で会おう』作:いぬじゅん氏〜が現在生まれている。
『駅は様々な星が集う心をつなぐプラネタリウムだ』駅から夢を。遡ること1983年、JR職員だった20歳を過ぎた藤井フミヤ達7人が、福岡県久留米駅から東京へ旅立った。同じ頃、ラジオのリクエストで命を救われた女性との出会いから、放浪生活に終止符を打ち「音楽の送り手になろう」と決意し、私は札幌駅を発った。
8人は東京目黒で出会い、チェッカーズは芸能音楽界に数々のドラマを創り出した。森は生命の源。『森は様々な生物が集う地球の学校だ』。駅(人)と森(地球)をつなぐ企画、それがTREE×ART。
音楽を日本木材で奏でる
日本産木材について、山野楽器店、ヤマハに在籍した私は当時から「何故楽器製造に日本木材を使わないのだろう?」という疑問を持ち続けていた。
この命題は2006年から試行錯誤を繰り返し、TREE×ART企画とリンクする様にやがて1本のエレキギターを産み出す事になる。第2話はその出会いと制作過程を描いてみたく乞うご期待を!
PROFILE
一般社団法人創造再生研究所/所長
クリエイティブ・ディレクター
小見山將昭氏
祖父が木挽職人。両親の勤務先JA敷地で育つ。音楽マネージメント&プロデューサー。上場企業コンサルや地域再生コンテンツプラン等。