木の個体情報から加工まで一元管理! 海外に学ぶ、最新技術『ブロックチェーン』の可能性
2021/07/23
アマゾン熱帯雨林
違法伐採が横行する南米では、ブロックチェーンの活用により、木材産業のトレーサビリティと透明性を高め、アマゾン熱帯雨林の保護にも役立てる取り組みが始まっている。
ペルーで2018年から開発がすすめられている「ウッドトラッキングプロトコル(WTP)」は、ブロックチェーンをベースとする木材追跡プラットフォームだ。ブロックチェーンにより、伐採許可証や伐採日、原木の樹種、大きさ、位置情報などのデータを一元管理し、伐出・運搬・加工までのサプライチェーンを可視化する。ペルーでは、木材のサプライチェーンの追跡を紙書類ベースの手作業に頼っているのが現状だが、このプラットフォーム上で伐出業者、運送会社、製材会社が同一のデータを共有し合うことで、業務の効率化にもつながっている。
生産から消費者まで
木材を原料として製品を生産するメーカーでも、ブロックチェーンによってトレーサビリティを高める取り組みが広がっている。木材パルプに含まれるセルロースから再生繊維「ビスコース」を生産するインドのビルラー・セルロースは、ブロックチェーンを活用し、森林からファッションまでのサプライチェーンを可視化するプラットフォーム「グリーントラック」を2019年に導入した。
これまでに20以上のファッションブランドや小売業者が参画。消費者が衣服の品質表示札のQRコードを読み込むと、ビスコースの原料となる木材の原産地まで遡ってサプライチェーンの情報を閲覧できる仕組みだ。
特化した開発
「フォレストチェーン」に表示される原木のサプライチェーンの情報。
ブロックチェーンを活用し、木材のトレーサビリティに特化したソリューションを開発するIT企業もみられる。スペインの「フォレストチェーン」は、ブロックチェーンとQRコードを活用し、木材のサプライチェーンのトレーサビリティを実現する月額定額制のソリューションだ。
森林管理者は、原木ごとにQRコードを貼付して、伐採地や伐採日、樹種、大きさ、FSC認証取得の有無、位置情報など、あらゆるデータを登録でき、これらの情報に加えて、サプライチェーン上の履歴が逐次ブロックチェーンで保存される。一連のデータは最終製品を生産するメーカーや小売業者はもとより、森林認証機関、民有林を指導・監督する行政機関らにも共有できる。
「フォレストチェーン」を活用し、原木のQRコードを読み込む様子。
文:松岡由希子
FOREST JOURNAL vol.8(2021年夏号)より転載