家具やエクステリアに人気! 新たな可能性を秘めた国産広葉樹の活用方法とは
2021/05/31
また家具や建具メーカーなどと組んで、立木の段階から商品化に取り組み、1本ずつ抜き切りして持続的な森林利用に結びつける自治体や林業家も登場している。
ただ心配なのは、現在の動きは必ずしも広葉樹材の高付加価値化に進んでいないことだ。まず今の広葉樹利用の大半は製紙チップである。そして最近になって求められるのは、バイオマス発電燃料なのである。各地のバイオマス発電所は慢性的な燃料不足だから、天然林や里山林の広葉樹材も燃料にしようという発想だ。価格は建材用よりもはるかに安く、質を問わずに量を求めることになる。林業家からすると、安くても山を皆伐して全部引き取ってもらえるから面倒がない。しかし、これでは広葉樹林もはげ山にされかねない。広葉樹の有効利用とは言い難いだろう。
安易に流れず、ていねいに取り組まなければ、広葉樹を活かせず持続的林業にならないのである。
PROFILE
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。
著書
『獣害列島』
860円/2020年10月10日発売/イースト新書刊
獣害は、今や農業被害だけではない。シカやカモシカ、ウサギなどの野生動物は、再造林した苗を食い尽くし、またクマとシカは収穫間近の木々の樹皮を剥いで価値を下落させるなど林業に甚大な被害を出しているのだ。そして森林生態系を破壊し、山村から人を追い出し、都会にまで押し寄せるようになった。なぜ、これほど野生動物が増えたのか、日本の自然はどう変わったのか、この緊急事態に何ができるのか。現場からの声とともに届ける。
FOREST JOURNAL vol.7(2021年春号)より転載