川上・川下連携の課題は「情報の共有不足」 新たな木材サプライチェーンを構築して克服を
2021/08/06
前回上げた事例では、木材流通の各社が集まって一つの会社を設立するところが多かった。とくに伊佐ホームズが設立した森林パートナーズは、ICTによって木材の流通過程の細かな情報も各人が一目でわかるようにしている。立木価格を引き上げて山主へ多く還元する一方で、材質を細かく定めた規格をつくって林業側にも出荷責任を負わせている。情報を共有するから、利益を各部門に適正配分することができるのだろう。
いずれにしろ日本の林業・木材産業は曲がり角に来ている。流通各段階がバラバラの思惑で動く従来型では多くのロスが出るうえ、国際的な動向にすぐ対応できない。新たな木材サプライチェーンを構築する必要がある。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。