ウッドショックに負けないビジネスモデルを! 成否の鍵は「木材のサプライチェーン」
2021/07/27
サプライチェーンを押さえて
安定した経営を
これらの例でもうおわかりだろうが、事前に木材の購入を長期契約している。そして山元の木材生産現場と工務店など木材を使用する側が提携して計画的に木材調達と建設を進めている。つまり木材のサプライチェーンを押さえているのだ。必要とする木材の量や購入価格を年間で把握して発注するから、ウッドショックのような突然の価格高騰にも影響を受けない。
山側も、自分の山の木がどこの何に使われるか知らないまま伐採して市場に出すのとは違って、具体的な使われ方を知り価格も定まっていれば、機材や人員の配置なども計画的に進められる。つまり林業・建築双方の経営が安定するのである。
残念ながら、これまでの日本の林業、木材産業、そして建築業界は、いずれも自らの経営情報を隠しがちで、手の内をさらすことを嫌がった。だが、そのため双方が疑心暗鬼になって計画的な生産や建築ができなくなる。結果として今回のウッドショックのような、海の向こうから来た波に翻弄されてしまった。
今後、ウッドショックは弾けて木材価格も下落するかもしれない。それに備えるためにも川上と川下の提携を進め、木材のサプライチェーンを安定させるべきだろう。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。