土地の性質に適合した森の運営を C.W.ニコルさんが目指した森林・林業の再生
2020/04/08
この「択伐」は、故高橋延清先生の教えから生まれました。東京大学の北海道演習林(北海道富良野)で研究を続けた林業の第一人者で、天然林を対象として生態系に配慮した独特の伐採法を確立しました。これがいわゆる「林分施業法」というもので、林業関係者のバイブル的存在ですね。
高橋先生は5回、ここ「アファンの森」に来てくれました。 私のことを「バカ息子」と表現しながらも親しく交流していただきました。
富良野の森はとても広大ですが、夏は飛行機から林道が見えなくなるほど木が生い茂ります。大雨が降っても雪解けし ても、水が濁らない。土の質がすごく良いのです。そのため、ミズナラなど良質の木材が取れます。中には1本5000万円クラスの木もあります。私は東大は別に好きではありませんが、この富良野の森だけは大好きです。
林業に携わるフォレスターはつらい道かもしれませんが、 健康的に働けますし、多くの仲間も作れます。日本を素晴らし い国にするヒントが林業の中にたくさん詰まっています。
PROFILE
C.W.ニコル
作家・1940年イギリス南ウェールズ生まれ。1995年日本国籍取得。カナダ水産調査局北極生物研究所の技官・環境局の環境問題緊急対策官やエチオピアのシミエン山岳国立公園の公園長など世界各地で環境保護活動を行い、1980年から長野県在住。1984年から荒れ果てた里山を購入し「アファンの森」と名づけ、森の再生活動を始める。2005年、その活動が認められエリザベス女王から名誉大英勲章を賜る。2011年、「アファンの森」が日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録される。2016年、(社)国土緑化推進機構より「第6回みどりの文化賞」受賞。2016年、天皇、皇后両陛下がアファンの森をご視察された。
FOREST JOURNAL vol.3(2020年春号)より転載