減少を続ける”林家”の手取り。 本当に国が掲げるべき政策とは?
2019/12/27
意欲ある林家は現状維持を志向
現実に、今も所有林の経営に意欲的な林家が何を考えているかと言えば、木材が安価にしか売れない中で、無理に収入を確保しようとして伐り過ぎにならないように、むしろ所有林での生産活動を控えようとしている実態がある。
彼らにとっては、子どもやその先の世代になっても林業経営を続けられるようにすることこそが重要であり、そのためには山に木があり続ける状態を維持しなければならないからだ。つまり、何とか現状の維持を図ろうとしているのである。
ところが、国は新たなシステムの必要性を説明する資料で、林家の7割が経営規模に関して現状維持を志向しているとのアンケート結果をもとに、そのような林家を「意欲がない」と決めつけた(後に見解を修正)。
だが、それは曲解と言うべきで、林家の経営マインドに対する無理解を露呈することになった。
林家の手取り収入を増やしたい
増加する森林資源を活用することによって、伐採業への従事者を含めた雇用を拡大する意味は山間地域社会にとっても大きい。だが、そもそも林業は木を育てて山をつくるプロセスが不可欠であり、伐採という生産行為のみで成り立つ営みではない。
国は新たなシステムの担い手である「意欲と能力のある林業経営者」を「伐採業者等」だと位置付けている。
しかし、伐採業者を林業経営の代表選手であるあるかのように扱うのは適切ではなく、林業の成長産業化を言うのであれば、意欲のある林家が経営を持続でき、山づくりを続けられるようにすることも目指されなければならない。
そのためには、やはり林家の手取り収入が増えることこそが必要であり、立木価格を今後さらに上昇させることこそが政策目標に掲げられるべきだと強調したい。
PROFILE
林業ライター
赤堀楠雄
1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。