様々な工夫を凝らして森林の回復を目指す! 林業家の努力と取り組み
2019/12/23
重要なのは、全体の面積と残す樹木の率だ。世界的には伐採面積の4%から20%程度の土地に樹木を残すんだそうだ。
また北欧ではヘクタール当たり5~10本残すといった基準が決められている。これも土地や気候によるが、基本は、伐採跡地に再び植生がもどりやすい面積をどう見極めるかだろう。
新しい技術と
林業現場での努力
伐らない木を多くすると経営に響く。とくに採算の悪い日本林業では、残す数を増やしたら木材生産量が落ちて収益が悪化するだろう。
また、いくら樹林を残してもササばかりが繁茂してしまう可能性もある。雑木や雑草が繁りすぎて、再造林した苗木の成長に悪影響を与えても困る。
なお日本の場合、実施にもう一つの壁がある。それは補助金だ。日本の林業は補助金なくして維持できないとされるが、その交付を受けるには細かな条件がつけられている。
たとえば主伐して再造林をするという森林経営計画に則って行う場合、伐採地の一部を残すことが認められるかどうかたはっきりしない。
私の訪ねた林業家は、一部に樹林を残したいが、もし主伐-再造林の定義から外れて検査で合格しなかったら補助金がカットされてしまわないか心配していた。
ただ森林生態系の回復を早めたいという気持ちは強いから覚悟の上で行っているそうである。
それでも、果敢に新しい技術に挑戦する林業家に出会うとホッとする。研究者だけでは森は守れない。現場の努力なくして日本の林業の再生はないのだから。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。