歴史は繰り返す? ヤト・ヤソの被害にご注意!
2019/12/05
それが今後はまた増えるだろうと、この研究者は予測してみせるのである。
過去から学ぶ
「ウサギなんか、昔の作業員は罠で捕まえてけっこう食べてたんですよ。でも、今はそんなことしないでしょ。増えるだろうなあ」。
実はこの現場は国有林だったのだが、案内してくれた国有林のスタッフは、食生活の変化とからめた分析までしてくれた。
確かに今は肉が簡単に手に入るから、ウサギを捕って食おうなんて人は滅多にいまい。
池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」では、兎汁が名物の料理屋も登場したが、それは江戸時代の話。ウサギ料理を専門に出す店というのは、今どき聞いたことがない。
「それじゃあ、これはウサギの食害なんですね」。そう念を押すと、「違う違う。ウサギは食べてるわけじゃないんですよ。前歯でスパッて切り飛ばして遊んでるだけなの」と研究者。
ウサギによって穂が切り飛ばされてしまった苗木。鋭利な刃物で切り取られたかのような切り口で、彼らの歯の鋭さが想像できる。
国有林のスタッフも「ウサギのスポーツだなんて言う人もいますよね」などと言う。まったくこちらは知らないことだらけで、ただただ拝聴するばかりであった。
皆伐再造林による新植地が増え、下刈りを省略したり、筋刈りや坪刈りにしたりすることで、今後どんなことが起きていくのか。
コストダウンのためのチャレンジも必要だが、かつての造林技術に学ばなければならない場面も出てくるかもしれない。
DATA
PROFILE
林業ライター
赤堀楠雄
1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。