山から木がなくなる!? 早生樹植林の最前線を追う
2019/10/25

現在、日本の林業現場で進んでいる主伐。山の木は全部伐るわけだが、その後の再造林には、再び50年以上も木を育てられるのか、再造林しても利益が出ない可能性があるなど、様々な課題がある。それらの課題を解決する道はあるのか?(前編)
林業の課題と解決策
現在、日本の林業現場で進んでいるのが主伐である。戦後植林されたスギやヒノキ、カラマツなどの人工林が伐りどきを迎えたとされるからだ。主伐となると、基本的に山の木は全部伐るわけだから、その後の再造林が課題となる。
しかし、これまでどおりスギやヒノキ、そしてカラマツなどを植えてよいのか……という悩みがある。再び50年以上、これらの木を育てられるのか?そして現在の木材価格は下落しており、再造林しても利益が出ない可能性も高い。
そこで注目されているのが早生樹の植林だ。生長が早く、20年から30年で製材に向いた太さ(概ね幹の直径30センチ)に育つ樹種だ。これまで50年~80年だった林業のサイクルを早めることができると期待されているのだ。
そのうえ次回の主伐まで50年以上かかる樹種の場合、山主の世代は代わっている可能性が高い。後継者が林業を引き継いでくれるか不透明だ。だから山主は再造林を躊躇する。しかし早く育つのなら植えた人が収穫できる可能性も出てくるし、需要や材価の予測もある程度しやすくなるだろう。
早生樹の注目研究は熊本県
早生樹の研究は、国の研究機関や大学、各県の研究所など公的機関で行われている。なかでも注目すべきは熊本県の研究だろう。
熊本県の林業研究指導所は、30年近く前から早生樹研究を行っており、52種もの樹木による生長比較林を造成した。その結果、センダンを有望とした。センダンは落葉広葉樹でアジアに広く分布し、日本へは古くに移入されたため在来種として扱われている。
条件が良ければ15年で幹直径が30センチになる。熊本県で試験植林した結果は、約20年で直径50センチになった。また材質は堅くてケヤキやマホガニーに似ており、欧米ではフローリングなどの内装材や家具材用に使われている。日本でも家具材なら市場で1立方メートル単価が4~5万円を期待できるという。スギ材の4倍近い。
しかし日本では、街路樹や公園などの緑化木であり、林業用樹種ではなかった。なぜならセンダンの幹は枝分かれするため、真っすぐな材が長く取れないからだ。そこで植えて2年間ほど伸びてきた側芽をかき取ることで幹を通直な4メートルに育てる技術を開発した。そして育林条件も、生育環境は斜面上部より谷筋や平地で生長がよく、日照が重要なことや施肥の必要性などの知見を得た。
一方で「獣害、とくにシカの角こすりの被害を受ける」「こぶ病の発生がある」などの課題もある。また苗の生産方法も開発しなければならない。挿し木はできず、種子の果肉に生長抑制物質を含むので果肉の除去が必要だ。自然界では鳥が食べて排出することで芽を出すのだが、植林するには人為的に行わねばならない。