馬とともに”理想の林業”を目指す――「馬搬」に見る地域づくりのヒントとは?
2019/08/23
牧場近くの荒れ地を使い、放牧地として活用。隣では遊休農地を耕し、大豆の栽培も手がける。
馬搬のメリットとはなにか。まず、人家にほど近い場所に森が広がる松本において、重機が入れない山の木も運び出すことができる。また、大規模な作業道を必要としないため、道を作るコストも燃料もかからない。さらに、馬が木材を運んだ跡ならすぐに植物が生えてきて、環境にも優しい。まさにいいことづくめだが、実務以外にも様々な好影響があったと、原さんは語る。
「馬は、道具ではなく生き物。力づくではなく、意志を伝えて動いてもらうためには、まず馬に心を開かないといけない。林業の現場にいたスタッフを馬方として従事させたのですが、彼自身の成長を感じるなど、人材育成にも一役買ってくれています。それと、牧場を開放して誰でも入れるようにしているのですが、まるで裏山で遊ぶような感覚で地域の人たちが来てくれるようになって。自然を感じたり、人との出会いがあったり、山をそういう風通しのいい場所にすることがヤマトを受け入れた目的でもあったので、とても嬉しく思っています」。
ヤマトが信頼を寄せる馬方の犬飼哲平さん。
原さんが目指す林業は、「里と山をつなげ、豊かな社会をつくること」。そのビジョンを実現するための重要なピースとして、ヤマトが存在している。
地域の人が自然と集まる場に。写真は、ヤマトの弟分、ポニーのコタロー。
「馬が来たことで、理想とする『循環』のヒントが見えてきたような気がします。遊休農地を畑に戻す馬耕や、肥料としての馬糞の活用などもやっていきたい。自然と調和した『山基準』の産業として、林業を取り戻していきたいです」。