川上・川下連携の課題は「情報の共有不足」 新たな木材サプライチェーンを構築して克服を
2021/08/06

これまでも川上・川下を連携するべく様々な試みが行われていたが、「情報の共有不足」により協力関係が崩れてしまっていたケースが見受けられる。「新たな木材サプライチェーンを構築する」ことが、これらを克服するためにも、ウッドショックに負けないためにも必要だ。
» 前編『ウッドショックに負けないビジネスモデルを! 成否の鍵は「木材のサプライチェーン」』はコチラ!
川上と川下の提携は
重要だが難しい
前回、川上と川下の連携の大切さを伝えたが、実はこれまでも幾度か同じ試みが行われていた。とくに2000年代初頭は、全国に「近くの山の木で家をつくる運動」が広がり、「顔の見える家づくり」が広がった。当時は国産材(=近くの山の木)振興の意味が強かったが、システムとしては林業家と製材所、そして建築家が組んで行う産直方式である。施主が山を訪ねて自分の家を建てる木を選んだり、自ら伐ったりするイベントも行われた。そして建築家は国産材を多く使う家を設計したのだ。
この運動は一世を風靡し、全国に同じような会が設立された。森林・林業白書でも取り上げられた。しかし、数年で急速に萎んで解散した会も多い。なぜだろうか。簡単に言えば、この「顔の見える家づくり」を主導するのが建築家であったことだ。それが悪いのではないが、問題は買い取る木材価格。私が取材したケースでは、ほとんどが「時価」だったのである。つまり市場価格に合わせるというのである。
それでは林業家にとって価格は安定せず、安値に偏りがちでメリットは薄い。むしろ施主を山に案内するなど手間ばかりとられる。個人住宅だから、1件成約しても大量の木材が捌けるわけでもない。美味しいところは建築家が持っていく……と恨み節を聞かされた。結果的に協力関係が崩れて開店休業状態、あるいは解散することになったのだ。
ここに川上と川下の提携の難しさがある。結局、疑心暗鬼に陥るのだ。その理由は、情報が共有されていないことだろう。山側に年間で必要な木材の量や質をあらかじめ伝わらず、また価格もはっきりしない。逆に建築家側からすると、欲しい木材が必ずしも供給されるかどうかわからない。それぞれがいくらマージンを取っているのかも開示されない。そうした状況は、お互いを信頼し合えなくする。
新たなサプライチェーンを構築し
ロス削減・国際的動向へ対応を
今回のウッドショックに負けない家づくりを行う企業体では、それをいかに克服するかがポイントだ。やはり必要なのは、建築家・工務店側が明確に年間の経営計画を公表すること。林業家も自分の山にある木の種類(樹種、樹齢、材質)や量などを把握して木材生産計画を示すこと。製材、プレカットなどの流通過程も価格を含めて公開すべきだろう。それができて初めて、信頼感が生まれる。すると1本の木を無駄なく使うことも可能になるし、流通で発生するロスを排することもできる。