熱海キコリーズの取組み! 民間林の課題解決へ、民間と行政のハブ的存在を目指して
2021/05/28

年齢も性別も職種も様々なメンバーからなる「熱海キコリーズ」。昨年、NPO法人化した同団体は、森林を取り巻く地域課題を解決するための、民間と行政のハブ的存在を目指している。
地域を巻き込みながら、
民間林の課題解決へ
「もうすこし切ってみて」「ひっぱってみよう」「あ、いける、いける」。
現場は、管理を任されている熱海の市有林。女性4人、男性1人の参加メンバーがそれぞれの持ち場に分かれ、高さ20mの杉の木を切り倒した。チェンソーを振るった女性メンバーの傍で、俯瞰で全体を把握しているのが、代表の能勢友歌さんだ。本業は広告業。東京と熱海との二拠点生活を経て、今はテレワーク中心の生活で熱海に腰を据えているという。
東京との二拠点生活で、今は熱海に住民票を置く代表の能勢友歌さん。
NPO法人「熱海キコリーズ」は、20代から60代まで年齢も職種も様々なメンバー21名からなる団体だ。造園業、ウェブデザイナーなどそれぞれが本業を持ち、主に週末に林業活動を行っている。
「平日仕事して週末林業をしてよく頑張れるねっていわれるんですけど、私にとって森にいることは義務ではなく、癒やしであり楽しみなんです」と能勢さんは笑う。
「熱海キコリーズ」は、2016年に森林保全ボランティアの活動を行うための任意団体として発足。静岡県熱海市主催で開催された自伐型林業研修に参加したメンバー11名によって立ち上げられた。
「最初は軽い気持ちで研修に参加したんですが、荒廃する森林の問題を知り、気持ちが変わった。熱海市の面積の6割は森。でも、住民にとって森は遠い存在です。活動のなかで地域と森を繋げることもしていけたら、と」。
団体設立後は、熱海市内、姫の沢公園内の人工林の管理を任され、間伐活動をスタート。当初から間伐材の活用を念頭に置き、間伐材を用いた製品をマルシェで販売したり、森で体験会を開催したりなど、地域住民との交流にも力を注いだ。
間伐材はまっすぐな木材以外にも、曲がっている根元や細い木も活用。チェンソーやカンナで製材し、付加価値をつけて販売する取り組みも。
本業が広告業の能勢さんが広報活動で力を発揮し、製品化には建築、デザインを生業とするメンバーがメインで関わるなど、メンバーがそれぞれの持ち味を活かし、知恵と技術を持ち寄れることが「熱海キコリーズ」の強み。何でもやってみようというチャレンジ精神と行動力もあいまって、「熱海キコリーズ」という名は、たちまち地域に浸透するように。そして、企業タイアップや製品提供サービスの依頼が増加したことも後押しとなり、2020年4月にNPO法人化。今後はさらに活躍の幅を広げる計画だ。
地産地消にこだわる熱海のフレンチレストランとコラボし、間伐材を使った料理プレートを開発。
「より深く社会課題の解決に取り組むために、民間林でのモデルケースを創出したいと考えています。同じ思いを持つ地元の事業者さんから民間林を借り受けて、みんなで集える『親森林フィールド』という場所を現在、準備中です。熱海の間伐材を活用したウッドデッキやアスレチック、ツリーハウスを設置するなど、地産地消や循環を感じられる場所にしたい。森と人が繋がれる新しいイベントも色々と計画しています」。
行政と民間の中間に立ち、社会課題解決のハブのような存在になることが「熱海キコリーズ」の役目だと能勢さんは語る。キャッチフレーズは、「熱海の森に新しい風を」。森と地域を繋げることを目指し、自分たち自身が森と関わることを楽しみながら、「熱海キコリーズ」はこれからも前進し続ける。