山の棚卸し×価値の品定めで稼ぐ! 山に生える木々の価値を見極めるコーディネーター
2020/08/20

自分の山の価値がわからない……そんな山主に山に生える木々の価値を知ってもらうことが林業振興の第一歩。優れた木材を銘柄化して高く販売するために、「山の棚卸し」を試みているコーディネーターがいる。
隠れた銘木を見つけ出せ!
価格が4倍になることも
林業にとって木材は商品、山は商品を保管する倉庫だ。問題は、この倉庫に何がどれだけ保管されているのか知らない山主が多いことだろう。そのため、せっかく「商品」を欲しいという顧客が現れても売りそびれる、もしくは適正価格がわからない……。
そんな根本的な課題を解決するために、まず自分の山にどんな木がいくらあり、価値はどれくらいか調べるのが「山の棚卸し」である。ようするに山の在庫管理だ。
「山の棚卸し」を行う呼びかけは各地で行われ始めて、そのやり方を伝授する講習会も開かれるようになった。今回は、「山の棚卸し」を通じて地元の木材の銘柄化を進めている愛知県岡崎市の一般社団法人奏林舎の事例を紹介したい。
奏林舎のある額田地区は、かつて盛んに林業が行われていた地域だが、現在は放置された山林が増えている。そこに唐澤晋平氏が移り住んだのは2014年。そして搬出間伐などの事業を始め、奏林舎を立ち上げた。
「講習会で『山の棚卸し』を知って、うちの地区でもやってみました。まず平均的な山林にプロットを決めて、そこにある木の本数や直径、樹高、そして曲がりなどをチェック。試し切りもして材質を確認します。そこから出せる製材(角材、板材)を想定し、山全体の材積から出荷した場合の価格を求めるのです」(唐澤氏)
提携する製材所。木材の価値を上げるにはきめ細やかな製材が重要だ。
実際に試みると、これまで自分の山に関心を持っていなかった山主も注目した。具体的な山の木の価値が算定され自分の財産がわかるからだ。ただし、市場価格で木材を計算すると決して儲かるほどの価値は出ない。それでは林業に対する意欲は高まらなかった。
「でも額田地区の中には、早くから枝打ちを行うなどていねいに育ててきた無節で高品質なヒノキの山もあるんです。それを並材と同じように扱うのはおかしい」
そこで山主が選んだ自慢のヒノキに絞って「山の棚卸し」をしてみた。そして提携した製材所にもっとも価値の高まる寸法に製材する。だいたい内装材や家具に使える2メートルの板材に仕立てた。すると中には原木価格が並材の約4倍になったものまであった。
岡崎市額田産の無節ヒノキ材をリタウッドと命名。並材の4倍の価格が付いた。
それを奏林舎が工務店などに卸す。その一部は地元にオープンした古民家を改造したネパール喫茶の内装として使われた。山主も自分の山の木が使われた現場を目にして「手入れした山の木は高く売れる」と実感できれば、林業に対しても前向きになれる。
リタウッドで古民家をリフォーム(床と天井)したネパール喫茶「茶流香」。
茶流香」のフローリング。内装用の木材は長さ2メートルで十分な点も有利。