ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【防護パンツ編】
2020/06/08

防護ズボン着用の義務化により、様々な特徴を持ったパンツが現れた。だが種類が多く、どれを選んだらいいのか迷う人も少なくないだろう。そこで今回は、各メーカーの代表的なアイテムを代わりに試着してデザインや動きやすさ、丈夫さなどをチェックしてみた!
≫ 第2回「ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【林業用ジャケット編】」はコチラ!
≫ 第3回「ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【ヘルメット編】」はコチラ!
紹介してくれたのは……出来杉計画の梶谷哲也さん!
はじめまして。奈良県黒滝村森林組合の梶谷哲也です。ところで、皆さんは防護パンツやジャケットなどの装備をどんな基準で選んでいますか? 今は技術も進歩していろいろなメーカーから魅力的な商品が出ていますが、なかなか試す機会がなく自分に合ったものを選べてない人も多いのではないでしょうか。実際僕自身もそうでした。
「ホームページの情報だけじゃなくて生の声が聞けたらな~」と考えていましたが、この度フォレストジャーナルさんとコラボしてレビュー連載を開始することになりました。防護ジャケットやヘルメットなど主流メーカーの商品を徹底的に検証して、特徴や着用感などをわかりやすく一覧にしています。
安い買い物ではないからこそ、失敗したくない「林業アイテム選び」の参考にしていただけたら幸いです!
チェンソー防護パンツは
暑くて動きにくい?
これまでパンツが現場作業員に自発的に広まらなかったのは、やはり暑い、動きにくいということに尽きるでしょう。この点については各メーカーがベンチレーション(通気口)やストレッチ性を高めることでかなり改善されてきています。
そうなると、後はバランス。大きくパンツの傾向は2つあって、1つは軽くてよく伸び動きやすいけれど、その分生地が弱く破けやすいパンツ。もう1つはカッチリとした履き心地だけど丈夫で長持ち。これはもう各自が自分の嗜好に合わせて選ぶしかありません。
いくらベンチレーションがあっても暑いものは暑いです。でも、日本の夏は普通の作業パンツを履いていても結局は暑い。対策としては冷感接触のコンプレッションの効いたタイツ(パッチ、ももひきではなく)を履くと汗で肌に張り付くことがなくなり、作業性が改善されます。真夏にタイツとパンツを重ねて履くなんて狂気の沙汰に思えますが、暑さよりも快適さが上回りますのでお試しを。
価格と耐久性は?
今回の試着では耐久性は確認できておりません。あくまでも生地の強さなどから判断しております。また、価格の高低についてはあまりとらわれないように、そのパンツの特徴を取り上げるようにしております。
1.履き心地
2.脚の「保護部」
3.「補強」の有無
4.「裾」の状態
5.ベンチレーション
6.ボタンとポケット
以上の6項目を検証しております。また「ボタンとポケット」に出てくる「折り尺」とは主にヨーロッパの現場作業者が携帯しているもので伐倒作業時に方向を確認したり、材の長さを測る時に使用されている道具です。折り尺の参考はこちら。
防護パンツ8種類を
履き比べてみた!
防護パンツにも様々な種類がありますが、実際の履き心地はどうなのか? メーカーによって違いはあるのか? これらを検証すべく、8種類の防護パンツを履き比べてみました!
※1 サイズについて
テスターは身長179cm、体重70kg。普段着用しているパンツはウエスト76cm。ウエストで選ぶとMサイズ、身長で選ぶとLサイズということで購入の際、サイズ選びで苦労が多い。今回は各メーカーに協力いただき、おおよそ体系に合ったものを用意していただきました。また、記事に出てくる数値については実測値です。
※2 掲載情報について
情報は全て2020年3月のものです。価格が変動している場合や、商品が変わっている場合があります。
1.ファナー ベンチレーションパンツ
価格:36,852円
※モデル着用サイズ:M80
細身ですっきり。生地もとても丈夫で耐久性はかなりありそう。夏の暑さに耐えることができれば、長く使える逸品。
履き心地 | ◯ 多少ごわつきがあるが、四股を踏むような動作(イチローストレッチ)や膝上げはしやすい |
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保護部 | ◎ 保護部は薄くて軽い。肌に触れる部分はメッシュになっている |
補強 | ◎ 膝と裾の内側、補強のない赤生地部もしっかりとしており丈夫 |
裾 | ◯ 直径22cm。ブーツに裾をかぶせるのにちょうど良いサイズ。裾が上がらないように靴紐に引っ掛けるフックあり |
ベンチレーション | ◯ 長さ19cm。平凡な数値だが、通気口を横にガバッと開くことができるので、風通しはまだマシか。腰のベルト下にメッシュ部があるが、効果のほどは不明 |
ボタンとポケット | ◯ ボタン2つでしっかり留められる ◯ 左右前にポケット(ファスナー) ・右太ももに折り尺入れとチョーク入れ(ベルクロ) ・左太ももにスマホポケット(ベルクロ) ・右後ろポケット(ファスナー) |
2.ハスクバーナ テクニカルエクストリーム
価格:41,310円
※モデル着用サイズ:M50
際立つ格好よさ。圧倒的デザイン力に感服。最新、最強のパンツ。サスペンダーがついてくるが、これはチェンソーパンツが構造上重たくて下がってきてしまうから。これは取り外しできるのでお好みで。
履き心地 | ◯ 多少ごわつきがあるが、イチローストレッチや膝上げはしやすい |
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保護部 | ◯ 保護部は中程度の厚み。肌に触れる部分はエアリズムのようなサラサラとした生地。メッシュではないので夏場はべとつく可能性も |
補強 | ◯ 膝周りと裾にかけてしっかりとした補強。擦れや引っ掛けも問題にしないほどの丈夫さ。対してオレンジ色の生地は擦れ、ひっかけには弱そうだ。 |
裾 | ◎ 直径20cm。裾がかなり細くそのままではブーツにサッとかぶせられないので、ファスナーで裾を広げられるようになっている。一手間必要になるがこれもこの美しいシルエットのためなら仕方ない。裾が上がらないように靴紐に引っ掛けるフックあり。 |
ベンチレーション | ◯ 長さ21cm |
ボタンとポケット | ◯ ボタンとフックでしっかり留められる ◯ 左右前にポケット(ファスナー) ・右太ももに折り尺入れ(ファスナー) ・左太ももにスマホポケット(ファスナー) ・左右後ろにメッシュポケット(ファスナー) |
3.シップ ダブルエア
価格:38,000円
※モデル着用サイズ:M
「ダブルエア」の名に恥じない軽さ。軽さは快適さにつながる大事な要素。そして格好いい。形から入ることもまた大事である。
履き心地 | ◎ 生地のゴワつきもなく軽い。イチローストレッチや膝上げも楽々。お尻周りのストレッチもよく効いて快適に作業できるだろう。 |
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保護部 | ◯ 保護部は中程度の厚み。肌に触れる部分はメッシュに。 |
補強 | ◎ 膝周りに補強。オレンジ色の生地の部分もある程度の擦れや引っ掛けには強そう |
裾 | ◯ 直径21cm。裾が細いのでブーツを履くときに裾が引っかかったりするかも。裾が上がらないように靴紐に引っ掛けるフックあり |
ベンチレーション | ◎ いわゆるファスナーで開けるタイプではなく、膝裏が広くメッシュになっている。縦17cm、横23cmとしっかり大きい。そのため引っ掛けて破いてしまう心配があるが、虫刺されは裏に薄い生地があることで防いでいる |
ボタンとポケット | ◯ ボタンとフックでしっかり留められる ◯ 左右前にポケット(ファスナー) ・右太ももに折り尺入れ(ボタン留め) ・左太ももにスマホポケット(ファスナー) ・右後ろにポケット(ファスナー) |
4.オレゴン フィヨルドランド
価格:29,580円
※モデル着用サイズ:L
シンプルに黒いパンツなので、デザインは合わせやすく汚れも目立たない。多少重たいがすっきりとした作業パンツといった印象。
履き心地 | ◯ サイズがLだったこともあるのか、足入れしやすくスッと履ける。イチローストレッチ、膝上げともにスムーズ。 |
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保護部 | ◎ 保護部の厚みは中程度。肌に触れる部分はサラッとしたメッシュ。 |