林業から花園へ! スギ林に咲くアジサイが林業事業のリスク分散に
2020/01/27

前編では、観光花園としての「みちのくあじさい園」について紹介したが、それだけでは経営が続かない。実は第二幕があった。「プリザーブドフラワー」として活用することだ。フラワーアレンジメントなどでの需要が高く、地元農家に新たな雇用を生み出す結果となった。
プリザーブドフラワーにも活用
伊藤さんがスギ林で始めた「みちのくあじさい園」は、単なる観光花園ではない。実は第二幕があった。
考えて見ればアジサイに限らず、花の季節は限られている。年に2か月程度の開園だけでは副業にはなるが、経営という点では弱いだろう。その点「みちのくあじさい園」の真骨頂は、花の最盛期を過ぎてから始まるのだ。
8月に入ると、アジサイの花も枯れ始める。ドライフラワーぽく乾燥して、色が抜けていくのだ。すると、園内のそこかしこで花の摘み取りが始まる。それは花園としての管理でもあるが、実は摘み取った花が商品となるためなのだ。農家の人たちが手作業で花の部分だけを切り取り、それから葉や日焼けした花びらを除き、ていねいに梱包する。
「これがプリザーブドフラワーの素材になるんです」
プリザーブドフラワーとは、花を乾燥させた後に油性の薬品を浸透させて長期間保てるようにしたもの。水を与える必要もなく、ほぼ1年間は咲いた状態を保てる。触ると柔らかく、生きた花そっくりだ。合成樹脂などで作られた造化とは質感が違うので、フラワーアレンジメントやギフト用のリースにも使えると人気だ。
なかでもアジサイの花は、花束やリースの脇役として欠かせない。ランやバラのような華やかな花は目立つが、それだけでは魅力を十分に引き出せない。脇にアジサイの小さな花の集まりがあると似合うのだ。セイヨウアジサイのアナベルや日本のヒメアジサイなどが向く。もしフラワーアレンジメントされたリースなどを目にしたら、よく観察してほしい。たいていアジサイが添えられているだろう。
林業の経営の幅を広げた
プリザーブドフラワーを生産する大手メーカーによると、アジサイは恒常的に足りずにアメリカから輸入しているほどだという。しかし、国内のアジサイの名所は公園や寺院など公共的な場所が多く、花を出荷してくれない。