VR技術を駆使した“HiVision”誕生物語。スマート機械が林業に若者を呼び込む?
2019/12/20

スウェーデン生まれの運搬機械メーカー・HIABが発売したとある製品が、世界中で注目を集めている。そこで今回はHIAB製品を日本で販売するカーゴテック・ジャパンに話を聞いた。
メイン画像:『HiVision』は、カメラカメラベースの3Dビジョン技術を駆使した林業用クレーンの新たな操作ツール。
スマート機械で林業界の
多様性を推進
1944年に世界初のローダークレーンを開発、今では世界有数の陸上荷役運搬メーカーへと成長を遂げたHIAB。
現在は、港湾機器大手ブランドKALMAR(カルマー)と海洋船舶機器大手ブランドMacGregor(マクグレゴー)を傘下に収めるフィンランドのカーゴテック社の一員となり、その運搬機能が陸から海へと直結。更なる成長が期待されている。
日本においては、HIAB製品は1973年より販売を開始し、現在はカーゴテックの100%日本現地法人であるカーゴテック・ジャパンが手掛けている。
そんなHIABが2016年世界中の林業界を驚愕させる新商品を発売した。それが『HiVision(ハイビジョン)』だ。
連動するクレーンをトラックキャビンの助手席から操作する。トラックから出ることなく原木の積み込みが完了する。
本来木材運搬を目的とした林業用クレーンはトップシートで操作するものであるが、このHiVisionはトラックキャビンの助手席へ移動し、そこにあるVRゴーグルの3D映像を見ながら手元にある2本のジョイスティックでクレーンを操作して、原木の積み降ろし作業ができるという優れモノ。
製品が生まれた背景を、カーゴテック・ジャパン代表取締役社長の鈴木利哉さんが教えてくれた。
カーゴテック・ジャパン株式会社 代表取締役 鈴木利哉さん
鈴木さん:この『HiVision』、実は本社の3人の技術者がバーでウォッカを片手に語り合っていた夢の話が、現実の製品になったと聞いています! フィンランドはじめ北欧の冬の気温はマイナス20℃~マイナス30℃にもなり、あらゆる場所が凍結しますから、作業環境は非常に過酷です。
また、クレーンへの昇降時の転落事故が少なくありません。そこで彼らの「トップシートの位置にカメラを据え付け、その映像を見ながらトラックキャビンでクレーン操作できたら面白いね!」という会話から出たアイデアが正式な企画となり、製品化に辿り着いたのです。
VRゴーグルから見える視界は左右に270度、上下に130度と、人の視界と同じレベル。作業者が首を上下左右に動かせば、ゴーグル内の視界も同様に動く。目線はクレーン脇に取り付けられたカメラからの画像情報を3次元映像として処理しているため、従来のトップシート作業と同じ要領で操作できる。
作業者の安全性や快適な作業環境の確保は、林業界全体で考えていかねばならない問題です。
この製品を通して、クレーンへの昇降時の転落、蜂などの虫や野生動物との遭遇、真夏や真冬の過酷な気候条件から林業従事者を開放し、エアコンの効いたトラックキャビン内での快適な労働環境を用意することができます。