⚠️ これはテスト環境です ⚠️

注目キーワード

林業者の取り組み

日本の森は“手遅れ”ではない! ドイツ式“気配り森林業”に学ぶ

持続可能な森林づくりのために、何ができるのか。ドイツの森林官、ミヒャエル・ランゲさんと、森林コンサルタント、池田憲昭さんによる講演会『「気配り」森林業』は、その疑問に答えをくれた。

写真:ドイツの森林官による伐倒の様子(提供:池田憲昭氏)

木は育った分しか使わない

11月17日、東京ミッドタウンにて、ミヒャエル・ランゲ氏(森林官)と池田憲昭氏(日独森林環境コンサルタント)による「『気配り』森林業ードイツの古き良き森づくりから日本の地域の持続可能なソリューションを考える」と題したイベントが開催された。

講演の冒頭では、まず会場前方のスクリーンに、美しい森林の映像が写し出された。ランゲさんや池田さんが暮らすシュヴァルツバルト地方の人工森をドローンで空撮したものだ。まず驚くのはその多様性だ。モミやトウヒなどの針葉樹とブナやカエデなどの広葉樹が混在している、樹齢もさまざまな樹木が生い茂っている。

こうした「複層混交林」と呼ばれる森林に対して、日本でよく見かけるスギやヒノキだけの森林を「単層林」と呼ぶ。単層林は「植栽→造林→間伐→皆伐」というサイクルを前提とするが、複層林では間伐を行うのみで皆伐を行わない。人の手による植栽も行われず、鳥や虫や風によって運ばれて地面に落ちた種子の天然更新によって次世代の樹木が育っていく。当然、森林経営の手法も全く異なる。ではなぜこのような違いが生まれたのだろう?池田さんはその理由のひとつが、南ドイツやスイスなどの山岳地域に伝統的に根付く「恒続森思想」にあると指摘する。

「恒続森思想とは、一言でいうなら『木は成長の範囲内で利用しながら、絶えずどの世代も大径木が切れる状態、絶えず稚樹や若木が育っている状態に森を維持していく』という考え方です。ドイツでは300年以上前から、小規模な農家や林家の間で、こうした森林利用が根付いてきました。それがのちの世に体系化されたのが恒続森思想。シュヴァルツヴァルトの複層混交林も、こうした思想に則って生まれたものです。ここでは、いわば100年~200年の長期スパンで、次の世代、さらに次の世代への「気配り」を忘れない森林業が実施されています」

混交林で高付加価値、
低コストな林業を

では、複層混交林の施業とは、どのようなものなのか。再び、スクリーンに動画が映し出された。画面のなかではランゲさんの息子であり、森林官であるパウルさんが、直径1メートルはあろうかという大径木の伐倒に挑んでいる。チェーンソーとジャッキを巧みに操り、森林作業士であるパウルさんが、木立の隙間を狙って見事に大木を切り倒した。

「今、彼が倒したのはダグラスファー(米松)です」とランゲさん。

「非常に人気のある樹種で、最も良い部分は1立米あたり250~500ユーロ(日本円で30,000~60,000円前後)で取引きされます」

ドイツでは急斜面など作業の困難な土地ほど、このような価値の高い樹木を育てるという。

倒された木は、その場で枝払い玉切りされ、林道端までウインチで引っ張りあげられ、買い手別に選別して並べられる。そこからすぐに地元の製材業社をはじめとした買い手と交渉がはじまる。

「どの業者がどんな材を必要としているのかをいかに正確に把握するかが森林官の腕の見せ所。森づくりの目標に市場の需要を加味して、森林官が選木し、選別(原木の切り分け)の指示を森林作業士に出し、それをしっかり把握して伐倒、玉切り作業が行われることが大切です」とランゲさん。取引きがまとまれば買い手が自らトラックで材を引き取りにくる。日本でいう木材土場から原木市場までの過程が、すべて林道端で済んでしまう。中間輸送や中間業者を挟まないことでコストも抑えられ、森林所有者の利益が多くなる。伐倒から取引きの終了まで、作業にかかる経費は1立米あたり30ユーロ前後(3,600円前後)だと言う。

リスクに強く、
経済的にも合理的

とはいえ、ドイツの森すべてが混交林なわけではない。日本と同じように戦後復興のために針葉樹が大量に植林されたからだ。先人が苦労してつくりあげた単層林は、大きな財産であることは間違いない。ではなぜ、複層混交林化を進めるべきなのか。ランゲさんは「単層林の生態系としての脆弱さ」をその理由に挙げる。ドイツでは2年前からキクイムシが大量発生してトウヒが大きな被害を受けた。経営が成り立たなくなった単層林に補助金が投入される事態にまで発展したという。複層混交林化し多様性を高めることで、一度にすべての木がダメになるというリスクを回避できる。

皆伐後の造林が不要なことも、複層混交林化の大きなメリットだ。単層林では皆伐ののち、植栽した木がある程度の大きさに育つまで、毎年の下刈りが欠かせない。動物からの食害対策も必要だ。皆伐を行わない複層混交林なら、これらの作業がほとんど必要でなくなる。ただしシカが多い場所では狩猟によって、更新した稚樹の食害を抑える必要がある。トータルで200~300万のコストカットにつながるという。また造林から20~30年は間伐による木材収入が得られないが、複層林ならその間も継続的に木材収入を得ることができる。複層混交林化は経済的にも理にかなっていると言えるだろう。

12

林業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

  1. 日本の森は“手遅れ”ではない! ドイツ式“気配り森林業”に学ぶ
  2. 【おすすめクレーン3選】古河ユニックの折り曲げ式クレーンに新型が登場
  3. フリーマガジン「フォレストジャーナル」2021年秋号 9/17発行!
  4. 70ccクラス最軽量! 「プロ林業者が相棒に選ぶ」人気のチェンソーはコレだ!
  5. 山の安全性を高める「ウッズネット工法」とは? 伐採せずに土砂災害防止機能を向上
  6. プロ仕様の高性能! 新世代チェンソー『545/550XP® Mark II』登場
  7. 林業現場で活躍間違いなし! 気分も上がる新製品4選!
  8. コンテナ苗植栽を効率化! 植林用穴掘り機『ほるほるくん』
  9. 林業に役立つ人気アイテムを抽選でプレゼント! 応募受付は9/12まで

フリーマガジン

「FOREST JOURNAL」

vol.09|¥0
2021/9/17発行

 


 


Follow Me


» Special thanks! 支援者さま一覧はこちら